‐彼と彼女の恋物語‐



大人四人が集まって鍋を囲えば自然と会話は続いていき、箸もどんどん進む。


熊谷さんと山下あずさが持ってきたお土産という名の酒も進んでいく。普段は彼女に合わせあまり飲まない彼も結構呑んでいた。



「……そんなに飲んでも大丈夫なんですか」



酒をまともに飲んだことがない彼女は飲んでも飲んでも平気そうな3人へと投げ掛ける。


どうやら3人とも酒には強いらしく大丈夫、大丈夫と。熊谷さんに至っては、ぱたぱたと動き回る彼女に酒を勧める始末。



「飲んだことないですし………片付けもあるので」



フルーツサワーを片手に不敵な笑みを浮かべる熊谷さんに結構ですと断るといいから飲めよと脅される。



「……(敬さん…助けて)」



頼れるのは彼しかいないと視線を送る。彼のことだからコトはいいから、とでも言ってくれるだろう。なんて思ってたら。



「飲みなよ、ほら引っ越し祝いみたいな?」

「………………」

「(酔ったコトみたいな…)」

「(裏切りだ…!)」



熊谷さんは気色悪いニヤニヤ笑いを晒しながら山下あずさに視線を送る。と、悪ノリする馬鹿な山下あずさは。



「小音さん飲んでみなよ!(酔ってるとこみたい!)」



偶然なのかなんなのか動機は彼と一緒。ついに助けの綱がなくなってしまった彼女は瞳を泳がせながら策をねる。



が、浮かぶはずもなく。



「コト、ちょっとだから」



なんていう悪徳商法のようなやり口にこくり、頷いてしまったのだ。不敵に微笑む3人にも気づかず。



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