‐彼と彼女の恋物語‐
「(……え、は、なにこれ……可愛い)」
どうしたどうした、と妙な焦燥感に刈られた彼はなぜか彼女の額に手をかざした。
「熱はない…コト、眠い?」
暖房のせいだろうか、はたまた違うそれのせいなのか彼女の頬は火照って、若干ではあるが桃色が差している。
しかしその問いに彼女はゆりゆると小さく首を振るだけ。可愛さが更に増すだけだ。
「もしかして、………具合悪いの?」
はっと息をつめて彼女に近づいて気づく、酒なんて飲ませたから…と。しかしそこで新たに答えがでる。
「………酔ったの?」
そう、彼女は慣れないアルコールに酔ってしまったのだ。
飲んだばかりは特になんの変化もなくつまらないなーなんて思っていたのだが、まさに忘れた頃にとはこのこと。
今だに裾を細い指先で掴んでいるので一旦放させると、頼るものを失ったかの如く不安に顔色を染めた。
どうしたものか、酔った彼女を見たいと望んだのは自身なのだがいざそうなったときの対処法がわからない。
どうやら彼女は酔うときゃぴきゃぴと騒いだり、泣き上戸、笑い上戸になるわけではなく。遠回しに、ふわふわと不安定に甘えるようだ。
「コト、一緒にいたいの?」
流れる髪をそっと耳に掛けて、彼はしゃがみこんで目線を同じにする。ふわりと香るアルコールの香りが危なげだ。