‐彼と彼女の恋物語‐
無地のルーズリーフやペンが無造作に、だけども整理されたように置かれた机の上には書きかけらしき文字の羅列が並ぶパソコン。
「すいません、お仕事中に」
すぐ行きます。と、手早くトレイを机の空いたスペースに置いた彼女の細い手首を、彼が優しく掴んだ。
「いいから、ここにいてよ」
ふわりと、胸が締め付けられるような笑顔を見せられたら、もう何も言えなくなる。こくりと小さく頷いてに誘われるままに彼が座る間におさまった。
「ごめんね、仕事入っちゃって」
後ろから伸びた手はカップへ伸び、片手は彼女の所在なさげな左手に添えられている。
「……いえ、大丈夫です」
控えめに首をふった彼女の髪がふわりと香り、洗いたてのようなシャンプーの匂いがする。思わず鼻先を彼女の耳元に埋めた。
「寂しかったでしょ」
くすり、と笑う息に彼女の細い肩が揺れれば満足気に笑みを浮かべた。
「……寂しく…ない」
「素直になれよ」
「…………寂しい」
「ん、いい子」
生暖かい吐息に眉を寄せた彼女の顎を優しく指先で掴み誘導させると。
「ん…っ…」
重なり合う、唇。