‐彼と彼女の恋物語‐



甘やかしすぎなんじゃないかと思うほど彼は彼女を大切にしている。


作られた食事にも毎回の如く感謝の言葉を述べ口を開けばやれ可愛いだのやれ好きだなど。新婚だからなのかもしれないがそれにしても彼女からしたら対応しずらいことばかりだ。



食事が終わった後だって。



彼女がてきぱきと食器を片付けていれば横からするりと入ってきて。



「手伝うよ」



なんてことをまあ言う。とにかく彼は彼女が可愛くて仕方がないらしい。



「大丈夫ですよ、それよりお風呂入っ…」



可愛くて仕方がないから、もっともっと近くにいきたくなるのは男の本能だろうか。はたまたただの愛情か。



「んっ…けい…」



後ろを向いただけなのに近くにあった綺麗顔にあっという間に食べられていた。唇を。



「っ~……!」



余りに苦しそうにするのでそっと唇を話すと酸素を求めるように息を吐き出している。



「敬さん…いきなりな…」



キスが終わっても尚至近距離にある顔に抗議しようとしてふと、ある違和感に気づく。頭上では彼が微笑む気配がする。



その違和感、自分の左手をそっと持ち上げる。



「……敬さん、……これ」



違和感の正体は突然すぎる結婚指輪だ。



どうして彼はいつも対応しにくいことばかり、格好よくきめてしまうのでしょうか。



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