‐彼と彼女の恋物語‐
三物語。
「お腹いたい?」
「いや……、大丈夫です」
「そう、敬はまだ寝てるよ」
「………そうですか」
「入れば?」
「入ります」
少し大人な雰囲気を出す熊谷さんは彼女の腕のなかからミーヤを抱き上げる。
「にゃぁ…」
「敬には小音ちゃんだから、ミーヤは俺ね」
見た目と反した言葉を吐きながら彼はくるりと身をひるがえしてリビングへと脚を進める。
素早くスニーカーを脱ぎ捨ててパタパタと追いかければ途中、彼の寝室の扉が開いている。
少しだけ迷って、ゆっくり手をかける。
薄暗い部屋のなかに無駄に大きなベッド。その上に猫のようにタオルケットにくるまれて丸くなっている物体。
彼は低血圧だから、仕方ない。
「ねー小音ちゃん、朝ごはんなにー?」
と、熊谷さんの間延びした声が聞こえてくる。あーはい、なんて返事をしてゆっくり扉をしめた。