‐彼と彼女の恋物語‐
濡れた髪を乾かしながら鏡に映る自身の姿に息が詰まった。言われた通りに下着をしっかり身に付け普段のようにパジャマを着ている。
指示通りに、従順に動いているのが少々気に入らないが彼にだったらまぁ、いいと思えてしまうから、恋愛は不思議だ。
水気が無いことを確認しドライヤーを定位置に置いてふと、自身の身体を見つめて胸元に手を置いた。
「………大丈夫かな」
今までそういった経験がないだけに自分の体型がいったい良いのか悪いのか分からない。それに一番気になっている彼の好みだって。
今さら悩んだって仕方がないのだがなんせ急だったから。焦る暇さえ与えてもらえなかった。
乾き終えた髪をかき上げて数秒、目を瞑って速度を増す心拍数を落ち着かせる。いざとなったら嫌だと言えばいい、無理強いなどは絶対にしないひとだから。
ただ、やっぱり恐怖心は拭えない。それが出来るのはただ一人、彼だけだ。
彼女は意を決してバスルームを出た。