‐彼と彼女の恋物語‐
一瞬だけ驚いたように綺麗な瞳を見開いたがすぐに不敵な笑みに変わる。そしてぐっと縮まる顔の距離。
「そんなこと言われたら、止まんないよ」
苦しそうに眉を寄せたと思ったら彼は急に立ち上がりドア付近まで行くと部屋の電気を消した。あるのはサイドに置かれたオレンジ色のそれだけだ。
再び上に乗った彼の手は彼女が着るパジャマ。ボタンをするすると3つほど外すと優しく頬を撫でた。
「コト、強ばんなくていいから。服を脱がせるだけ」
「…っは…い」
「分かったら、身体の力抜いてみて」
早すぎる展開に緊張が高まっていた。撫でる頬から伝わる安心感に言われたままに息を吐いて身体を軽くした。
すると彼の手の動きは再開し、あっという間に下着姿にされていた。
「ふーん、白かぁ」
「……あんまり…見ないで」
「どうして、こんなに綺麗なのに」
「………恥ずかしい、です」
じっと観察するように身体を見つめられて何だか物凄く泣きたい気分だった。それでも彼は眺め足りないとばかりに見るので。
「敬さ、ん……」
彼女の瞳が潤んだ。 それにくすり、笑みをひとつ溢した彼はごめんねとキスを額に落とすとシーツで身体を被った。
「これならいいでしょ?」
実際には身体は見えているのだが肌に当たる冷たさに少しだけ気が逸れた。小さく頷くとそれを合図に彼は微笑み唇に自身のそれを重ねた。
「可愛いね、似合ってるよ」
「…っ…ほんと…?」
「本当だよ」
昼間とは違う物足りなさなど感じない優しくて強い口づけに目を瞑って必死に答えようとする彼女が愛しくて、愛しくて。
それでも、まだ緊張しているだろうと丁寧にゆっくり。これからのことを想定した彼なりの最大限の優しさだったりする。