‐彼と彼女の恋物語‐
喧嘩物語。
――――最近、コトの様子がおかしい。
愛を交わしたあの日から月日が経ち、年を越して数日後の昨日から、彼女の様子がおかしいのだ。
昨日は雑誌の撮影でスタジオに行って帰ってきただけ。たったその数時間の間に彼女は目も合わせてくれなくなった。無理矢理視界に入れば焦ったように逸らされる始末。
「……意味がわからない」
書斎でぽつり、呟く彼はクリスマス後に指輪のお返しにと彼女から貰ったセンスの良いネイビー色のセーターを着こなし腕を組む。
彼女の不可解且つ予測不能な行動に頭が一杯で執筆などしてる暇もないので、ノートパソコンは閉じられやらなければいけないはずのものすら放置状態。
「何かしたかなぁ…」
考えられることと言えば自身の失態だが生憎、思い当たるような節はなく更に悩みを深めるだけである。
話してくれるまで待とうと思っていたがいつになるか愚問だ。彼女に聞いたところではぐらかされるというのは目に見えてる。
「(キスしたい、触りたい、話したい、抱き締めたい)」
沸き上がる欲求と出来ない現実についため息が溢れる。
昨晩は一緒のベッドに寝たものの彼女が入ってきたのは随分後のこと。もちろんそんな雰囲気などあるわけもなく寝たふりをしていた彼は必死に堪えていた。
「……これって、喧嘩かな」
彼と彼女の初めての夫婦喧嘩である。