‐彼と彼女の恋物語‐
そこだけ切り離されたような空間で、彼が愛しの彼女を待つその姿はまるで雑誌の1ページ。
モデル顔負けの彼がふわりと香る優しい匂いに笑顔を見せる。
「ごめんなさい、今日もお迎えしてもらって…」
急いで来たであろう彼女は春の風に目を細め、背の高い彼を見つめる。
「謝らないで、勝手に迎えに来てるだけだから」
「……ありがとうございます」
「そ、それでいいの」
彼女の髪がなびいて目に掛からないように、彼がそっと耳にかければほんのり赤が差す頬。
「(可愛い、可愛いけど…)」
「敬さん?」
「今日は一緒にお風呂入ろうね」
「え…、なんで…」
明らかに困惑している様子に彼はにっこりと笑顔を向け、彼女の小さな手を取ると歩き出す。
「お客さんにナンパされたんだって?」
「………なんで…」
「優子さんに聞いた、なんで黙ってたの」
「……ごめんなさい」
「許しません。今日はお風呂で説教でーす」
「まっ、敬さん聞いて」
「それもお風呂で聞くから」
「敬さん!」
「あ、ミーヤのご飯買ってかないと」
「……(敬さん、馬鹿)」
―――最近、噂の喫茶店の美人店員には王子様がいるのです。