‐彼と彼女の恋物語‐


ぐるぐると歩いていた子猫は枕元の隙間に身体を埋めると、そこで休むことを決めたらしい。


苦笑を浮かべた彼はパソコンや書類をさっさと片付けると今にも夢に旅立ちそうな子猫を撫でて部屋を後にした。


それから彼の行動は早かった。


買い物に行く間喉が渇いてしまったときに。とプラスチックの容器に水を張り、廊下に置いておく。


本当は食事も用意したかったのだが子猫ということもあり下手なものを食べさせては悪いと暫し我慢してもらうことにした。


まぁ、寝ているので大丈夫だろう。


彼は車のキーを指に引っ掛けるとさっさと家を後にした。


今度は少し遠いホームセンターへ。


ーーーーー帰宅後。


両手両脇に荷物を抱えたものをリビングに置くと予想以上に買い込んだことがよくわかる。


少し休んでからでもいい気がするのだが、如何せん気まぐれな猫がいつ起き出してくるわからない。


着いて早々、買ってきたものを準備することにした。


猫用トイレや爪研ぎを部屋の角に設置して、それから部屋中の家具やドアの角には子猫が走り回ってもいいようにテープを貼っておく。


危ないと思う所に全て張り終える頃には日が暮れていた。そしてようやく子猫のお目覚めだ。


書斎で原稿を書き上げていたとに、ふと視線を感じたので振り向けばきょとん、とした顔で座っていた。


彼の顔をみるとにゃーと、一言。



「ご飯たべる?」



彼がそう言って立ち上がると足元に絡みついて一緒にキッチンまで行く子猫。


積み重ねた一つを手にとり開けると匂いにそそられたのか早く早くと急かすように鳴く。



「まって、皿に移すから」



綺麗に容器うつしそっとフローリングに置くとあんなに急かしていたのに食べようとしない。



「もしかして、違うのがよかった?」



そう尋ねると子猫はなんの躊躇もなくそれを食べ始める。なんとも気まぐれだ。


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