‐彼と彼女の恋物語‐



敬+山下あずさ



「山下、なんなの?え?飛び降りる?」

「いやいやいやいや!オカシイこの人怖い怖い怖い!!!」



某ラジオスタジオ。あずさの冠番組であるそれにゲストとして呼ばれた彼は、彼女の楽屋に来るなり無表情で脅しはじめる。



「夜中に生放送なんかするなよ。だいたい何?なんでゲスト?ふざけんな山下に呼ばれる筋合いなんてないから」

「ごごごごごめんなさい!!!やめてすださいその蔑んだ目はツライです!」



時刻は真夜中午前2時。規則正しい生活をしている愛しの奥さんは家を出る前にしっかり寝かしつけてきた。仕方なく。


本来ならば自分も一緒にベッドに入って今日もありがとう。好きだよ。と囁いて照れる彼女を抱きしめて寝る予定だったのに、だ。


一度、2人の間にスキャンダルが起きて以来、彼の結婚報道やお互いが友達だと言ったことから家族ぐるみで仲が良いと業界では有名。


それを鵜呑みにしたラジオのスタッフが出版社へと連絡。たまたま本を出す前だったことから宣伝として、視聴率の高い番組を二つ返事をした。


出版社のスタッフが。主に熊谷だ。


もちろん、ありえない無理ふざけんなお断り致しますの姿勢の彼が機嫌よく来てくれるわけもなく、こうして元気に罵倒してらっしゃるのだ。



「山下なんでラジオやってるの、モデルやめたの、脚折っていい?」

「本番、本番いきまーす!!!!」

「まだだよ、とりあえず指な」

「ゆっ、指一本で許してもらえるんですか!?感激しました!!!」

「あーくたばれ」

「大丈夫元気を出してあなたは強い子」

「きっも」



ーーーーはい本番いきまーす!


「こっ…今夜のゲストは、作家の野上敬さんです!」

「リスナーの皆さんこんばんわ。作家の野上です。ラジオは初めてなので少し緊張してますが、山下さんにフォローしてもらいながら頑張ります。今夜はよろしくお願いします」

「(誰コレ何コレ詐欺じゃん!!!怖い怖い笑顔めっちゃ怖い殺意を向けられている!!!)」

「(コト一人で寝かしてごめんね、山下ぶっ飛ばす)」




ちなみに、この日の番組は過去にスキャンダルがあった2人ということもあり話題を呼び、過去最高視聴率を記録。

この時間帯としては歴代1位を記録したと言われている。

リスナーやラジオ局側からは是非もう一度という声が上がったがその予定はない。






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