‐彼と彼女の恋物語‐
敬+ミーヤ
あーあーあーあー。今日もう仕事しません。無理です。
カタカタとキーボードを打っていれば目の前に急に現れた白い物体。遊び相手を探しているミーヤである。
データを消される前にささっと保存をした瞬間、キーボードの上に乗り上げ謎の単語を打ち込んで行く。
危なかった。過去に何度かデータを消されているのでもう慣れたもんだ。
「みゃあー」
彼の手のひらに収まるほど小さな顔を擦り付けて、構って構ってと催促する。この子を拾ってから日常茶飯事となったこれに勝てる方法を教えて欲しい。
可愛すぎる。
「なーに?何して欲しいの?」
「みゃ」
「分からないよ、かわいいけど」
耳元を撫でると気持ちよさそうに目を細める。誰だってこの子の手にかかれば骨抜きにされてしまうこと間違いなし。
ぽんぽん、と膝を叩いて呼ぶと器用に降りてきて足の上で丸くなる。
小音が来るまでは構える相手が彼しかいなかったため、日がな一日べったりだったことを思い出す。
子猫だったミーヤももう立派な大人。見た目はあまり変わってないような気もする。
「コトは山下と買い物行っちゃったもんね、さみしいね」
聞いてるのか聞いてないのか、真っ白な耳がピクピク動く。眠りに誘うように毛並みに沿って撫でていると自らも眠くなってきてしまう。
「(締め切り、なんだけどなぁ。でもまぁ、いいか。)」
ある小春日のこと。
春の訪れが来る前にたくさん甘えておきます。