‐彼と彼女の恋物語‐



優しく優しく。まるで羽に触るように彼の香りでいっぱいの大きなベッドに寝かされた彼女。


「これ、脱いどきな」



有無を言う暇もなく剥ぎ取られたパーカーは少し遠くの椅子に置かれた。少しの肌寒さが彼女を覆う。


柔らかい枕に頭を沈めてなんでこんなことにと考えてみるが結論は先生だから。と不明な答えに落ち着いてしまう。


どこまでも甘いのだ。彼女は彼に。


――大きめの枕のすぐ横に同じものが並べられる。すぐそばには彼の気配。


若干の気だるさを含んだ動きで彼女の隣に落ち着くと柔らかそうな布団に彼女と一緒に入る。


主人のいなかったそれは不快なほどに冷たく、だが隣の温もりによってそうでないものになる。



「―――……先生?」



隣り合わせに寝ているだけ。それだけでも十分な緊張を誘う材料だ。



「ん、コト。…手つなぐ」



なのに、それを甘く柔らかくほぐすようにして。彼は彼女の冷たい手に指を絡ませる。



「うん、あったかい」

「(わ、手…どうしよ!)」

「コト、お休み。ありがと」

「……はい。お休みなさい」



きゅっと力のこもった手に彼女の抵抗なんてない。もういいやとばかりにその温度に溺れる。


「(うん……あったかい)」



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