‐彼と彼女の恋物語‐
隣り合わせに寝て、手を繋いで。すごく近くて不思議と遠い関係に、彼女は満足気に瞳を閉じる。
「先生…」
「ん、なに」
「お帰りなさい」
「―――……ただいま」
すぐ近くで笑う音が聞こえた数分後、彼の寝息が静かにこだまする。
それに誘われるようにして重くなる彼女の寝不足気味な瞼。
「(ちょっとだけ)」
外は朝だというのに気温が高く太陽が顔をだす。その法則に逆らうようにして冷房の効いた部屋で眠りにつく二人は、雇い主とハウスキーパーである。
繋がれた手には同じ想いがあるのに、伝わらないのは彼女が彼女だから。