‐彼と彼女の恋物語‐
四物語。
何かが自身の髪を撫でるのに気づいてゆっくりと確かめるようにその瞳を開ける。
長い睫毛に縁取られた色素の薄い茶色のそれは静かに上を向く。
自分に伸びる大きな腕。きっと頭に乗る手は無意識だろう。
「おはよう、コト」
視線に気づいてこちらを向いた綺麗顔は、彼女が恥ずかしくなるくらいに惚けるような笑みを浮かべる。
「よく寝てたね、可愛いよ」
「………そうですか」
「(ほっぺた赤い。可愛い)」
寝ぼけ眼の彼女は彼に寝顔を見られていたことも頭を撫でられていることも気にならない。
ベッドヘッドに背中を預ける彼はその姿を堪らなく可愛く思いついその桃色の頬に唇を落とす。
「……やめてください」
「可愛いから、つい」