‐彼と彼女の恋物語‐
じっと彼を見つめていれば十分に眠気がとれてすっきりした顔になっていることが伺える。綺麗な黒髪についた寝癖が証拠。
「いつ…起きたんですか」
「ちょっと前だよ」
「…(仕事…)」
未だ覚めない頭と身体を腕で起き上がらせる。彼女がここにいる意味を果たさなければいけない。
彼女が動くことで頭においてあるそれがふわりと退く。かわりに華奢な身体を支えるように腰に回る。
「どうしたの、まだ寝てな?」
「否、仕事が…それにご飯はまだですよね…?」
「……そうだけど、べつにいいのに」
「今、何時ですか」
遮るような問いかけに苦笑をもらしつつ服と一緒に置かれた腕時計に視線を向ける彼。
「11時ちょっと前」
「………お昼、ですか」
「そうだね」
「……ごめんなさい」
しゅんと睫毛を揺らして己の失態に落ち込む。ちょっとどころか馬鹿みたいに爆睡してしまった自分にため息。
その姿を愛しそうに目尻を下げて見る彼。そっと腰を抱き寄せて顔を上げさせると瞼に唇を落とす。