‐彼と彼女の恋物語‐
「センセ…」
「お願いしたのはこっちだから、謝っちゃだめだよ」
「…………」
「返事は?」
「…、はい」
「うん」
納得したように額にキスをすると少し癖がついた髪を優しく梳く。酷くゆったりとした時間に思わず再び寝てしまいたくなる。
それでも彼女は一刻も早く仕事がしたいらしい。
「あの、ご飯…」
「(まだいたいのに)うん」
「なにが食べたいですか」
「コトはなにが食べたい?」
くるくると指先に茶色の髪を巻き付けて悪戯するように微笑む。
「あの、先生が食べたいやつ…」
「(コトが食べたいって言ったら怒るかな)…そうだね、軽いやつ」
「あ、フレンチトースト作ろうとしてたんです。朝」
「じゃあそれで(いつか食ってやる)」
「(なんかすごく見てくる)…わかりました」