‐彼と彼女の恋物語‐
―――――――……
――――…
真夏の朝に相応しい汗をかいて起き上がった彼女は酷く呼吸を乱していた。
「(昔の、夢だ…)」
睫毛は知らず知らずのうちに流れていた涙が濡らしていた。
ただ寝ていただけなのに重苦しい倦怠感に歩くのだって億劫に感じた。
冷蔵庫からミネラルウォーターを出してゆっくり飲む。
―――小音っていうのか、綺麗な名だね。
出会ったばかりのころに彼に言われた言葉が脳裏を過る。ただそれだけなのに乱れていた呼吸が落ち着く。
「先生……早く、会いたい」
ぽつり、まるで不安定な時期の少女のような弱々しい声。
その呟きは暗闇に消えていく。
「……先生…ひとりは…」
嫌だ。それは言葉にできなかった。
「(わたしが不幸にしたから)」