‐彼と彼女の恋物語‐
「そうですか」
「うん」
そしてこの甘ったるい声と台詞も同じく1週間前から。
彼氏どころか恋愛経験すら未熟な彼女に対しての嫌がらせなのか。
最初こそはさすがにその台詞に動揺していたが日中飽きずに言われまくるとなんだかどうでもよくなってくる。
「あの」
「んー?」
「ご飯、…冷めちゃいます」
「(あ、ついコトが可愛すぎて…)…食べよっか」
「(やっとか)」
待ちわびたかのように湯気を醸し出すコーヒー。向かい合ってダイニングテーブルに座る彼はそれを喉に流し込むと優しく微笑む。
「いただきます」
「……いただきます」
律儀に手を合わせて少し屈む素振りを見せた彼。それに少し送れて彼女も同じことをする。
もう慣れ親しんだこの光景は働き初めた初日の朝に彼から要望されたこと。
「どうせなら一緒に食べよう。朝早いし、ね?」
なんて上手く丸め込まれて。気がついたら次の日には冷蔵庫には大量の食材が詰められ、暗に作って一緒に食べましょうと言われてることを理解した。
有限実行者である。