‐彼と彼女の恋物語‐



しばらくして重い身体を引きずるようにして準備をする。今日は早めに行こう。


歯を洗って顔を洗って、適当に髪を整えてひとつに纏める。


いつもの鞄に携帯と財布を突っ込んで少しだけ急ぎ足でスニーカーを履く、と。


入れたばかりの携帯が音をだす。いきなりすぎるそれに着信だと気づくまで少しの時間を要した。



《………もしもし》

《コトー?おはよー》

《おはようございます、どうしたんですか》

《コーヒー飲みたい。早く来て》

《(わがまま…)今いきます》

《待ってるよ》



名残惜しげに切られた電話。朝早くだというのに心地いい声でいとも簡単に彼女の気持ちを変えてしまう。



「早く、行こう」



吐き出した行きには憂いなどなく、乾いた明るさが垣間見える。


履きかけのスニーカーに足を入れて急ぐように扉をあけた。



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