‐彼と彼女の恋物語‐
「どうぞコーヒーです」
「ありがと、スキだよ」
「(まだ言ってる…)」
彼の家についたのはいつもより随分早い時間で、リビングでミーヤを抱いた彼に早く早くと急かされコーヒーを淹れさせられた。
一口含んで満足気に微笑むとキッチンに向かおうとする彼女の腕をとる。
「え…」
すとん、と横向きに彼の膝上に座らせられる彼女は何事かとすぐ近くにある顔を睨む。
「コトちゃん」
「…なんですか」
慣れない呼び名に照れたのかさらに眉間を寄せる。それにくすりと笑って額に唇をあてる変態小説家。
「(可愛いな、照れてる)」
「先生、手退かしてください。朝ごはん作れません」
「あのさ、コト」
「なんですか。顔近いですよ」
「なんかあった?」
「…、いいえ。何も」
なんかあったと言われてすぐに思い付いたのは今朝の夢。それでも素直に話すなんてことはできなくて若干の間を作りながらも嘘をつく。
彼はその間になにかあったことを察するが彼女は気づかれてないと思っているらしい。