‐彼と彼女の恋物語‐
抱き締められて、いつもなら少しあしらうだけで終わるのに上手くいかなくてつい何も言えなくなる。
一定のリズムで頭のとこにある手が弾む。まるで眠りに誘うようなその素振りに抗えない。
「(寝るな寝るな寝るな…)」
「(静かになった…)」
ゆっくりと重くなってくる瞼。寝てはいけないとわかっているのにもう半分は夢の中である。
そのせいでタオルケットを捲られたことにだって気づかない。
「(ほんと、可愛い。キスしたい)」
「(うー……)」
したい。なんて思っていた彼は彼女が夢現なのを良いことにその綺麗な唇を額に落とす。
それから数分、完全に落ちた彼女の細い指が彼のシャツを緩く掴んでいた。
その指に、自分のそれを這わすとゆっくり絡める。離れないように、離さないように。