‐彼と彼女の恋物語‐
「あの、先生起きてください、時間です」
「んー…わかってるよ」
わかってる。と続ける彼は少し機嫌が悪いように思える。なんだか泣きそうになる。
「……ごめんなさい」
つい、口をつくのは謝罪の言葉。
「(黙ってよう…)」
軽くため息を吐いて時間の経過を待つことにした。これ以上言ったって無駄な気がする。
その気配に瞬時に眠気を覚ました彼は自分の腕の中で俯く彼女を見てハッとする。
「(ああ、もう、大事にしたいのに)」
むしゃくしゃする得体の知れない、知りたくもない感情に振り回されそうになりながらもなんとかそれを抑えて。
「ごめんコト、今起きたよ」
「……煩くてごめんなさい」
「違う違う、起こしてくれてありがとう」