‐彼と彼女の恋物語‐
「(反抗期って…)」
「(めっちゃ見てくる!)」
「(否、可愛いけどさ)」
「……なんですか」
「いや…うん」
無視と言うか軽くどっかいけよみたいな雰囲気を醸し出されて、仕方なさ気にリビングへと戻っていく小説家。
彼女はクールなのだ。
それでも構いたい彼は嫌がる白猫に何やら話しかけている。その姿は変態にしかみえない。せっかく良い顔してるのに、勿体無い。
彼が所望したスープパスタを作るべく、彼女は世話しなく手を動かす。
それを、瞳の端で見つめるものがいることには気づかない。
「(こんなに好きなのに、コトはシャイだ)」
「(あ、トマト忘れてた)」
―――なぜ
こんなに想いあっているのに、
世界は二人を導かないのか。
彼の小説のなかの一文である。それは、彼自身の想いである。