‐彼と彼女の恋物語‐
数週間が経った日の夕方。彼が熊谷さんと共に帰宅した。
「つーかーれーたー」
「お帰りなさい」
「ただいまー」
覇気のない酷く怠そうな声音で喋る彼はリビングにいた彼女に後ろから抱きつく。
少しだけ邪魔そうにする彼女はあしらうこともなく、彼とは反対に生き生きとした表情の熊谷さんに視線を向ける。
「―――お疲れ様です」
「小音ちゃん、ごめんね敬取っちゃって」
「…………」
「ねみー」
「熊谷さん、帰って寝てください」
「うん、そうする」
キッチンで麦茶を飲む熊谷さんは疲れた感をアピールするように首を回している。
若干うざい。
「よし、帰るわ」
「さようなら」
「敬のことよろしくね」
「わかりました」
「ばいばーい」
手を振る熊谷さんに冷たい視線を送る彼女はリビングで見送り。
そそくさと去る熊谷さんになぜ来たのか些かの疑問が残るがあの人だからまぁ、仕方ない。