‐彼と彼女の恋物語‐



はっとしたようにその手を遠退ける彼女。あわあわと焦ったように口走る。



「や、えっと、違くて」

「もう離しちゃうの」

「いや、あの…おやすみなさい」



挙動不審とはまさにこのこと。結局優しい彼が笑って流してくれる。



「寝てくるから、いい子にしててね」



ちゅっと、まるで何でもないように目尻にキスをしたと思ったらさらりと頭を撫でて寝室へと旅立った。



じわり、じわりと追うような羞恥心。信じられない行動をした自分と子供扱いする彼に、もう色々と駄目。



寝室から漏れていた光が消えたことを確認してほっと息をはく。



「(とりあえず、ちょっと早いけどご飯…!)



パタパタと足音で思考を紛らわせるようにキッチンへと駆け込んだ。



と、バサリ。何か足元にあったものにぶつかった。正確には引っ掛かって中身が出てしまった。


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