‐彼と彼女の恋物語‐



「えっと、野上は今休息をとってまして…」

「そう…なら伝言だけ。ネクタイ取りに来てって」



瞬間、どくんと脈を打つ心臓。ああ、そうか。もう潮時なんだと頭の隅で思う。



「……ネクタイ、ですか。わかりました」

「よろしくお願いします、じゃあ」

「あ、はい。わざわざありがとうございました」



電波の切れる独特の機械音を耳にして安心してしまう自分に苛立つ。



あんなに綺麗な声、優しくていいひとに決まってる。

彼に似合うひとに決まってる。


やりきれなさで、笑えてくる。



「(結局、思い知らされただけだ)」


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