‐彼と彼女の恋物語‐



―――――――………
――――…



馬鹿みたいに冷静にキッチンに立つ彼女の後ろ姿は今にも消え入りそう。



それを、ただじっと気に食わないとでも言いたげに見つめる綺麗顔は少し機嫌が悪そう。



ふと、視線に気づいた彼女が料理を運ぶがてらに立ち止まる。



「おはようございます。なにかご用ですか」

「……いや、何でもないよ」



明らかに他人行儀なそれに僅かな疑問と焦燥感を覚える彼がゆっくりと歩みを進めて定位置につく。


それを合図に彼女も動きを再開させる。



「今日はいつにも増して品数が多いね」



小鉢の数に彼が言う。



「少ないよりは。先生も多い方が好きですよね」

「うん、好き。なんか得した気分」



ちらり。覗くように見る彼は何かを探ろうとしているようにみえる。が、なにも得ないと解したのか自然に流す。



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