‐彼と彼女の恋物語‐
全ての用意が終わったようすの彼女がコップ2つと麦茶をテーブルに置いて席につく。
「食べよ、コト」
「そうですね」
「いただきます」
「…いただきます」
黙々と食べ進めていく彼女と、それを気にしながら箸を動かす彼。
仮眠といえど、睡眠とったイケメンは数十分前よりは遥かに良い顔色をしていて、内心ほっとする。
が、しかし。その変わりに表情はなかなかいけ好かない。飄々としているようで実は超見ている感じが気に入らない。
彼は彼で何故かちょっと冷たく他人行儀な彼女がイヤで少々苛立っている。
思いが伝わらないことは、近い距離を遠ざける。
「ねぇ、コト」
「はい」
「―――…どうかした?」
「いいえ、何かありましたか?」
「…いや、うん…大丈夫」
開いた距離は、なかなか縮まらないのが大人の世界。