‐彼と彼女の恋物語‐
お互いの関係を位置づけるような言葉。そう、彼女は彼の普段を知っているが、彼は知らないのだ。
知る必要がないから。
握られた手に僅かばかりに力がこもる。
「……そっか」
「はい」
「じゃあ、買い物はどこでするの?まさかコンビニ?」
そんなんじゃ健康的に…。なんてぶつぶつ言い溢す彼に返事を返す。
「スーパーに行きます、少し遠いんですが」
「ああ、そうゆうことか」
数回頷いて、納得したように笑みを見せる。
「家に帰る前に寄っていく?そのスーパーに」
「いや…大丈夫です、特に買うものもないと思います」
「そう?しっかりしてるね」
流石、コト。と大切そうに呼ばれる自身の名になんだか凄く泣きたくなる彼女。
「(……別れが、きてる)」
あと何回、名前を呼んでもらえるだろうか。