‐彼と彼女の恋物語‐

七物語。




そのままゆっくりとした足取りで行けば、小さなアパートが見えてくる。



「近いねー、ゆっくり歩いたのに」

「まぁ…(通い易いところを選んだからなぁ…)」



アパートの下まで来ると彼は立ち止まり、彼女の足も止まる。きょとんとしたような表情の彼女に彼は苦笑を溢す。



「本当は部屋に上がってコトといちゃつきたいけど、男としては辛いから」



そう言って彼は長い指を小さな顔に添わせて上を向かせると。



「これで我慢するね」



そう囁いて額にキスをした。驚いたように目を瞑ったことにさらに彼は唇を滑らせて首筋に吸い付いた。



「ちょ……っ…せんせ…」

「黙って」



藍色の空間に響いたそのリップ音は妖しい色を含んでいる。



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