‐彼と彼女の恋物語‐



細い彼女の指先に擦り寄るミーヤは分かってるとでも言いたげに長い睫毛を伏せる。


「そう、ミーヤは一人じゃない」


ミーヤは。


無意識的に左手がテレビのリモコンに触れる。薄いフレームの薄型画面がシャンプーのCMを流す。


確か先生が映画を録ったと言っていた。パチパチと小さなボタンを押して画面を切り替える。


「ああ、これか」



幾度となく観たその映画。いつだったか、あの人がいなくなってからは観ていなかった。


懐かしいオープニングを眺めながら重くなる頭をゆっくり傾けて大きいソファーに横たわる。

それにあわせてミーヤが移動する。頭のいいところは主人ゆずりなのか、猫特有なのか。


いつか調べてみよう。


いつか、此処とは違う何処かに行ったときに。


テレビの中では既にファンタジーな物語が始まっているらしく、不思議な静寂の中に聞きなれない声だけがする。


それが鼓膜を叩くのに比例して頭が重くなる。


そういえば寝不足だったんだと思った時には既に遅し。


高級なソファーは寝心地が良すぎる。



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