‐彼と彼女の恋物語‐
ベッドの中で朝にはそぐわないことをしているように見える二人の姿に、熊谷さんは一瞬詰まるも何事なかったように彼に詰め寄る。
彼は彼で全くの無視を決め込んでいるようで、自分に身を預ける彼女の髪に鼻先を埋めて「シャンプーの匂いだ」なんて言ってる。
ずかずかと寝室に入ってくる熊谷さんはベッドサイドに立つと壮大な物音を響かせながらテレビで見るようなそれを取り出した。
瞬間、乱暴な手つきでタオルケットを彼女の頭まですっぽり被せた彼。彼女の視野は端から端まですべてタオルケットでいっぱい。
「先生、意味がわかりません」
「ちょっと被ってて」
彼女のくぐもった声にぶっきらぼうに返す様子はいつもより余裕がないように聞こえた。
が、しかし。すぐに聞こえてきたのは驚くほど冷めた重い声だった。
「そんなもんここに持ってくんなよ」