‐彼と彼女の恋物語‐
報道によれば雑誌の撮影から交際が始まったらしく今では互いの家を行き来するまでに発展しているらしい。
そんなの、彼女がいるときに来たのは昨日だけだったので知らなかった。
「(夜にでも…来てたのかな)」
文字の羅列に脳内が破壊されていく。無性に苛立ってしまうのだ、無性に。
こんなことをして調べている自分に彼女は苛立っていた。
「っ…(もう、嫌)」
乱暴に投げられたそれは空中に舞って、鈍い音を立てて落ちた。彼女程の力ではどうにもならないが、それでも液晶画面は割れていた。
「……携帯、変えなくちゃ」
フローリングに散らばる破片と機械を片付ける程の余裕を今の彼女は持ち合わせてない。
だから、虚しさが増しただけの感情をどうにもできなくてベッドに身体を沈ませた。
何も聞きたくない、見たくない、知らない、自分なんて嫌い。様々な感情が折り混ざるとそれは消化しきれずに冷たさに変わる。
彼女の瞳は、徐々に光を見なくなっていた。