エゴイストよ、赦せ
「おまえは俺たちとは違うだろ? おまえは生きることを選らんだ。外国の彼女だって、おまえを恨んじゃいない」


「そうだけど、そうかもしれないけど、わからないよ……。それに、三鷹だって……」


「俺は……、とっくの昔に死んでるんだよ。アイツが自殺したときに、な」


その言葉は、小さく呟くような声だったけれど、何故だか、とても力強く感じた。

まるで、揺ぎ無い決意を聴かされているような。


「そんな顔するなよ。半年くらい前だけど、アイツの親に、やっと許して貰えてな。引越し先は、アイツの実家の近くなんだ」   


僕が驚いた顔をしたからだろう。

三鷹は詳しい話を始めた。

彼女は亡くなったわけではない、と。

ただ、それは身体が存在するだけだけれど、と。

三鷹はそう言った。


「植物状態を想像すればいい。何かに反応を示すことはほとんどない。自分自身で呼吸できるだけマシだけどな」


「でも……」


僕は、その続きを飲み込んだ。

それでも生きている、そんなことを軽々しく言って良いはずがない。

三鷹の苦悩、家族の苦悩を、僕がどれだけ解るというのだろう。
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