エゴイストよ、赦せ
「これからは……、彼女のために生きるってこと?」


そうなのだろう、と僕は思った。

けれど三鷹は、僅かに首を左右に振った。


「なあ、俺が一番信用できないって思うのは、どんな奴だと思う?」


「え?」


「自分の行動を“誰かのため”だとか、そんなふうに口にする奴だ」


「だって、三鷹は」


「違うよ」僕の言葉を遮って三鷹が言う。


テーブルの上の三鷹の左手が、強く握り締められていることに気づいた。


「俺は、アイツのためだとも、アイツの家族のためだとも思ってない」


「だったら、どうして?」


「アイツの傍にいて、アイツの世話をすることで、俺が、俺自身が救われるからだ。罪を償っている気分になれる」


「罪……」


「ああ、罰なんだ、これは。それから、死んでしまった俺が、生きていた頃の俺に触れられる。それが、ほんの少しの慰めになる。全部、自分のためなんだよ」


少しだけ、震えているような声だった。
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