エゴイストよ、赦せ
その日は、午後から小雨が降っていて、その年の冬一番の冷え込みだった。
いつもと同じように帰宅した僕を待っていたのは、いつもとは違った郵便受けの中。
入っていたのは、一枚のポストカード。
手に取って見ると、それは外国からのエアメールだった。
差出人の名前は書かれていない。
心臓がトクンと波打つのがわかった。
はやる心を落ち着かせようとするけれど、うまくいかない。
鍵を差込み、ドアを開ける。
部屋に入ると、ノートパソコンが入っているバッグを、床に放り投げるように無造作に置いてしまった。
メッセージ欄をもう一度よく確認する。
どこかのウェブサイトのアドレスが記入されていた。
やはり差出人の名前は見当たらない。
住所も書かれてはいなかった。
デスクトップパソコンの電源を入れる。
僕はOSが起動するのを待つ間に、煙草を吸うことにした。
ポストカードを持ったまま、換気扇の下に移動し煙草に火を点ける。
煙草を吸いながら、ポストカードを眺めた。
切手やスタンプ、写真などから、出された場所はマンチェスターだということが判る。