エゴイストよ、赦せ




その日は、午後から小雨が降っていて、その年の冬一番の冷え込みだった。


いつもと同じように帰宅した僕を待っていたのは、いつもとは違った郵便受けの中。

入っていたのは、一枚のポストカード。

手に取って見ると、それは外国からのエアメールだった。

差出人の名前は書かれていない。
 

心臓がトクンと波打つのがわかった。


はやる心を落ち着かせようとするけれど、うまくいかない。

鍵を差込み、ドアを開ける。

部屋に入ると、ノートパソコンが入っているバッグを、床に放り投げるように無造作に置いてしまった。


メッセージ欄をもう一度よく確認する。

どこかのウェブサイトのアドレスが記入されていた。

やはり差出人の名前は見当たらない。

住所も書かれてはいなかった。    


デスクトップパソコンの電源を入れる。

僕はOSが起動するのを待つ間に、煙草を吸うことにした。


ポストカードを持ったまま、換気扇の下に移動し煙草に火を点ける。

煙草を吸いながら、ポストカードを眺めた。

切手やスタンプ、写真などから、出された場所はマンチェスターだということが判る。
< 110 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop