エゴイストよ、赦せ
軽く溜息が出た。

煙草を吸って、少し落ち着いたからだろう。

冷静に判断できるようになってきていた。


ローサからではない――そう思った。

ローサはフランスのはずだし、彼女が僕の住所を知っているとは思えない。

もし知っていたなら、あの日、絵莉に頼んだりせず、僕の元に直接送ってきただろう。

待ち合わせの前日に届くよう日時指定すれば良いだけのこと。 

もしかして、絵莉が彼女に? 

いや、それもない。

あれから、ときどき絵莉と会ってはいたけれど、彼女にも正確な住所は教えていない。

絵莉にもローサからの連絡はないと言っていた。


誰からだろう? 

考えてみたけれど誰も思い浮かばない。

僅かばかりの可能性を考え、やはりローサからでは、そう思ってしまう自分に、また溜息が出る。 


煙草を灰皿で揉み消し、パソコンの前に座ると、ブラウザを起動した。

ポストカードに書かれているアドレスを打ち込んでいく。


「長いな……」思わず、そう呟いていた。


自分が緊張していることに気づく。


深呼吸をしてからエンターキーを押した。


表示されたのは英語のウェブサイトで、そこにアップされていたのは、音楽ファイルだった。


ディスプレイの両側に設置している小型スピーカのスイッチを入れてから、画面上の再生ボタンをクリックする。
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