エゴイストよ、赦せ
ローサの仕草
ローサは、煙草に一番合う飲み物はアップルジュースだって言うんだ。
甘過ぎず、苦過ぎず、あっさりし過ぎず、そのバランスがちょうど良いらしい。
普通は(普通ってカテゴリ分けはあまり好きじゃないけども)、普通はさ、コーヒーとかじゃないの?
そう思ったけど、僕は煙草にミルクティー(無糖)、この組み合わせが一番好きだったので、何も言わない。
世の中を見渡すと、他人が見れば不思議に思ってしまうような、そんな男女の組み合わせがあるじゃないか。
煙草と飲み物だって色々あっても良いはずだ。
他人から可笑しい、なんて指摘されるのは、大きなお世話というやつだろう。
「やっぱり美味しい」煙草の煙をくゆらせ、アップルジュースが注がれているグラスを見ながらローサが言う。
「そう」
「ミルクティーの方が良かった?」
「いや、悪くないよ。この部屋は暖かいし」
エアコンの性能が良いのだろう。
音は静かだし、床まで暖かい。
この部屋は、居心地が良い。
今のところは、ね。
暖かいものは上へ上へと昇っていく。
やさしさとかも、きっとそう。
いつだって、最後に残されるのは、悲しみと溜息だけ。