エゴイストよ、赦せ
そう、想いを伝えるのって本当に難しい。

僕らは、いったいどれだけのことを伝え合うことができるのだろう。

もしかしたら、愛するということは、一生をかけて想いを伝え合うことなんじゃないかな。

そのことを忘れてしまったとき、愛は終わるんだ。
 

それに気づいていないひとの方が多そうだけれど。

だから馬鹿みたいに、愛が量産されるのだろう。

使い捨てのコンタクトレンズみたいに、とても簡単なんだ。


僕はといえば、相変わらず愛なんてものは信じていない。

街中を歩くと、聴こえてくるメロディには、やっぱり、『愛してる』なんて言葉が乗っかっているし、映画の宣伝用ディスプレイに描かれたキャッチコピーにも、『愛』の文字。

僕はついつい、笑いそうになってしまう。


でもまあ、こういうのも、世の中が平和な証拠なのかもって思える。

多少の余裕は持てているみたいだ。

微笑ましいと思えるんだから。


どうやら、ローサの魔法はまだ解けていないらしい。


思うんだ。


僕は。


レイジーな風に乗った、


空っぽの“愛してる”が、


地球を何周も何周もまわりまわって、


誰もがみんな忘れた頃に、


置き去りにされていた想いが、


そっと雨に紛れて、


この世界に、


すべてのひとの、すべての心に、


降り注げばいいって。


そう思うんだ。
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