エゴイストよ、赦せ
本当を言えば、今でもわからないからだ。


たとえば僕は、ローサを愛していただろうか? 

ローサは、僕を愛してくれていただろうか? 

僕らは愛しあっていたのだろうか?


わからない。

やっぱり、わからないよ。


それでも、あの冬の日々を、僕は愛おしいと感じていて。

彼女と過ごした毎日を、とても大切に思っていて。

僕は彼女を想っていて。

愛は信じていないけれど、彼女のことは信じらる僕がいて。
 

それだけで。

僕らはそれだけで良いんじゃないかって、僕は、そう思っている。


『愛してる』の言葉が欲しかったわけじゃない。


想うだけじゃ伝わらないけれど、言葉だけじゃ信じられない。


僕らは、互いの温もりを感じることで、自分の鼓動を感じることができたんだ。


だから――。




――電車に乗り込み中央のシートに座った。

発車を知らせるメロディが流れる。

駆け込んできた小学生くらいの女の子が、僕の左隣に座った。

電車が動き出すと、彼女は屈みこみ、右足を気にするそぶりをみせた。

見てみると、膝から血が流れている。

周りの乗客は気づいているのか、いないのか、彼女の方を見ようともしない。

その横顔は泣きそうに見えた。
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