エゴイストよ、赦せ
「食器洗ってくるね」


煙草を吸い終わったローサが、キッチンへと向かう。


朝の9時。

夕食後の一服。

僕とローサにとっては、この時間帯に取る食事が夕食なんだ。


どうかしてた僕が、どうかしてた彼女――ローサに出会ってから一カ月。

週に三、四回は、こうしてローサのマンションでふたり、夕食を取るようになっていた。


彼女が僕の前に再び現れたのは、マフラーを貸した日から一週間以上経ってからだった――。




「良かったぁ、やっと会えた。もう会えないかと思ったよ」 


僕がいつものように電車を乗換えるため、駅の改札口を通りホームへの階段を下りようとしていたときだ。

背後から、僕のコートの袖を掴んで、あの時と同じくニッコリと笑ってから彼女はそう言った。


彼女の首には、僕が貸したアイボリーのマフラーがしっかりと巻かれていた。
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