エゴイストよ、赦せ
だけど、彼女の方は、笑い過ぎなのではないだろうか。

出会ったばかりの、よく知らない相手に対して、よくそんなに笑えるもんだ。


「だからさ、名前も知ら」そこまで言った僕を遮って彼女が言う。


「ローサ」


「ローサ?」


「うん、あたしの名前。ローサ」


「それ本名?」


ハーフ、或いはクォーターというやつだろうか? 

実際、彼女はそう思えるような顔立ちをしていた。


「みんなそう呼ぶから」


「みんなって?」


「お店の人たち。お客さんとか」


「ああ……」


「嫌いになった?」上目遣いで僕を見る。


「……まだ好きにもなってません」


僕がそう答えると、ローサはフフフと笑い、悪戯っぽい表情で「“まだ”なんだ?」と言ってから、また笑った。
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