エゴイストよ、赦せ
モグラのマフラー








寒くなると思い出す。

吐く息の白さに、寂しさとか切なさとかが入り混じった冬の匂いが。

身体を叩きつける冷たい風が。

僕の首筋から流れ込み、心の水底を刺激するんだ。

人波に溺れそうな街中で。

光が沈み込んだ駅のホームで。

想いを空に浮かべた公園の噴水の前で。


僕はマフラーをしない。

持っていない。

嫌いなわけではない。

失くしてしまったんだ。

いや、正確には、あるひとに貸したままになっているのであって、失くした訳ではないのだけれど。

なんて言うか、直訳ではなく意訳って言えば良いのかな。

とにかく、『失くした』という表現であっているはず。

そう思う。




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