エゴイストよ、赦せ
あの日と同じように、ディスプレイラックに収められた本とCDを見ていく。

CDは少なく、僅かに30枚程。

僕が知っているのは、ジャニス・ジョプリンとクイーンだけ。

残りのCDは輸入盤で、そのほとんどは、フランスのミュージシャンらしい。

クイーンは、ドラマの主題歌で知った、とローサは言っていた。


前の部署で一緒だった同僚を思い出す。

僕がクイーンを聴かしたら、そいつは、「古臭い曲だな」と馬鹿にした感じの口調で言った。

間違った感想ではないので、特に気分を害することもなかった。

ところが、そいつは、ドラマの影響でクイーンがヒットチャートに顔をだすと、「クイーンは凄いよ。感動するぜ。一度聴いてみろよ」などと他の同僚(主に女性だが)に言うようになった。

どういうことだろう? 

心境の変化か、それとも女性を口説くためか? 

後者なら、ある意味で評価。

たぶん、どちらでもないのだろう。

つまりは、大勢(どんな人達なのかも知らないのに)が良いと言うのだから良いはずだ、という他人に依存した価値観。

周りと同じでなければ、自分に安心できないんだ。

喜びや感動さえも、安心のおまけとして味わう。

そんな、ケーキの上のデコレーションみたいな感情を共有して、嬉しいのだろうか? 
< 27 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop