エゴイストよ、赦せ
そういえば、ローサは得意料理のひとつにポトフを挙げていた気がする。

作って貰ったことはなかったので、すっかり忘れていた。

違う料理にすれば良かったかな、と思ったけれど、僕の方が上手く作れる料理なんてないのだから同じことだ。


「こないだ、豚の角煮作るの見てたから。便利だね、圧力鍋って」


「便利なものが増えた」ローサが、僕を指差す。


「指差さないでくれる?」


「『もの』なのは良いの?」


「漢字による」


「鍋と同じ方」


「『物』って言わないでくれる?」


絵莉がクスクスと笑った。


「いつも、こんな感じなの?」僕らを交互に見てから、絵莉が言う。


「まあ、だいたいそうかなぁ」


ローサが答える。


「そう」


絵莉は満足そうに頷いていた。
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