エゴイストよ、赦せ
 



ローサが絵莉に譲る服は、かなり多かった。

駅まで迎えに来る彼氏の車で帰る、と言うので、僕とローサは、彼女を駅まで送っていった。


車に乗り込む直前に絵莉は、両手でローサの手を包み込むように握り、小さな声で何か言った。

それから、僕の目をじっと見て「みーのこと、よろしくお願いします」と言い、頭を下げた。

『みー』とは、ローサのことだ。

絵莉はローサを『みー』と呼び、ローサは絵莉を『えっちゃん』と呼んでいた。


僕は、何をよろしくするのか解らなかったけど、とりあえず頷いた。

絵莉はどこか遠くへ引越しでもするのだろうか……そんな感じがした。


駅からの帰り道、ローサは僕の手を握り、磁石がくっつくみたいに、ぴったりと寄り添ってきた。


「どうしたの?」


「なんとなく……」


「そう……」


絵莉のことを尋ねるべきか、迷う。


「外国にさ、行っちゃうんだ。だから……、もう会えないかも」ローサが先に話した。


そうか、だから絵莉は、僕にあんなことを言ったのか。
< 32 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop