エゴイストよ、赦せ
ローサが絵莉に譲る服は、かなり多かった。
駅まで迎えに来る彼氏の車で帰る、と言うので、僕とローサは、彼女を駅まで送っていった。
車に乗り込む直前に絵莉は、両手でローサの手を包み込むように握り、小さな声で何か言った。
それから、僕の目をじっと見て「みーのこと、よろしくお願いします」と言い、頭を下げた。
『みー』とは、ローサのことだ。
絵莉はローサを『みー』と呼び、ローサは絵莉を『えっちゃん』と呼んでいた。
僕は、何をよろしくするのか解らなかったけど、とりあえず頷いた。
絵莉はどこか遠くへ引越しでもするのだろうか……そんな感じがした。
駅からの帰り道、ローサは僕の手を握り、磁石がくっつくみたいに、ぴったりと寄り添ってきた。
「どうしたの?」
「なんとなく……」
「そう……」
絵莉のことを尋ねるべきか、迷う。
「外国にさ、行っちゃうんだ。だから……、もう会えないかも」ローサが先に話した。
そうか、だから絵莉は、僕にあんなことを言ったのか。