エゴイストよ、赦せ
携帯で時間を確認すると、すでに夕方だった。

眠るのを諦める。

いろんなことを諦めなければ、生きていけないのだな、と思う。


煙草とライターを手に取り、コートを羽織ってベランダに出る。

外は小雨が降っていた。

冷たい風が僕の肌を撫でていく。

空は暗くなっていて、焦げついたフライパンくらい、汚れて見えた。


ライターで煙草に火を点ける。

一瞬の炎の中に、僕を嘲笑っているピーターパンの姿が見えた。

僕は、ピーターパンが、あの話が嫌いだった。

大人にならない子供? ネバーランド? 

なんて都合の良い話だろうって、いかにも大人が考えそうな話だなって、僕は子供の頃、ずっとそう思っていたよ。


「大人になれなかった奴が自分の世界に閉じこもる話だ」と言ったのは、誰だったかな?


煙草の煙と共に、ピーターを吐き出す。


“今のオマエみたいだな”


誰かが囁いた。


誰だろう? 

ピーターか? それとも神様か? 

どっちだって同じだ。

どちらも嫌いなんだから。
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