エゴイストよ、赦せ
悲しみの片隅
二週間ぶりに見る彼女の姿に、僕は少しの戸惑いを覚えていた。
僅かに、けれど確かに、トクンと心臓が波を打つ。
玄関で僕を出迎えてくれたローサは、何も言わずに抱きついてきて、そのまま僕の胸に顔を埋めていた。
「ローサ?」僕は少し驚いて言う。
彼女は無言のまま動かない。
やさしい香りがした。
何故だろう、力が抜けていく。
ローサは、暫くしてから身体を離すと、顔を上げて僕と向き合う。
そこにあるのは、いつもどおりの彼女の笑顔だった。
僕は、ほとんど無意識に手を伸ばす。
右手で彼女の頬に触れようとして。
けれど、その顔がぼやけて、揺れて。
僕は、彼女にもたれかかるように崩れ落ちる。
ぐにゃりと歪んだ意識は、そこで途切れた。