エゴイストよ、赦せ
世の中には、呆れるほど『愛』が溢れている。

映画、小説、音楽、果ては、子供が読む絵本にまで登場したりする。

なんで、そんなに、愛ばかりが溢れているのだろう。

永遠の愛だなんて、どうして、そんな嘘を語るのだろう。

嘘だからこそ、かな? 

そうかもしれない。

愛に拘るのは、それが永遠ではないと、心のどこかで思っているからじゃないのか。

決して綺麗なものではないことを、永遠の愛なんてないことを、本当は知っている。

終わってしまうことに怯えている。

だから、それを求めてしまう。

物語の中の別の誰かに、自分を重ねて、そうやって、愛を感じようとする。

その中に閉じ込めてしまえば、消えないから。


終わらない愛を求めているんだ。

虚構の世界の中に。


だって、そうだろう? 

本当に世界が愛で包まれているというのなら、世界中の誰もが、永遠の愛を感じ、信じているというのなら、わざわざ愛を語る必要はない。

それが当然ならば、誰もそれを叫ぶことはないだろう。

子供たちに教える必要すらないはずだ。

『私たちは、食事をします。排泄をします』

そんなことを、声高に語ったりするかい? 


愛はお金で買えないというけれど、もしも神様が『永遠の愛』を売り出したなら、みんな、それを欲しがるんだろう? 

神様のお墨付きなんだから。

ほら、それが証拠さ。

本当は信じてないことの、ね。
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